朝、6時半前に起きた私はそそくさと準備をし、ホテルを後にする。
ジャカルタ発の便は、9時10分。空港までは、事前情報だと30分かからないほどで着く。
チェックインの締め切りは1時間前の8時10分。
それがどうだろうか。
朝から信じられない渋滞。
Grabを呼んでもなかなか来ない。
高速を乗るためのカードがなく、乗車拒否されること15分。
ようやく見つかった配車には、10分かかる。
乗車し、空港までの到着時間を見ると、7時40分。
なんとか間に合ったと肩の荷が下りる。
韓ドラを見ながら、ぼけぇーっとすること、20分。
さっきから、全然進んでいないことに気づく。
スマホを見ると、どんどん予定到着時刻が遅れていく。
そうは言っても、まだ時間に余裕がある。
こんなこともあろうかと早くホテルを出発したのだ。
だがしかし、時間が進めど、目的地にはなかなか近づかない。
なんか嫌な予感がする。
ドライバー、これもしかして、下道使ってる説があるぞ。
そう勘ぐった私は、ドライバーに尋ねる。
どうやら、英語は通じない。
だが、こんなところで諦めるわけにはいかなかった。
翻訳アプリを使い、冷静に、確実にこの状況を説明する。
このまま、渋滞をちんたら待っていたら、私はフライトに間に合わない。
Cau you go there as possible as you can?
インドネシア語に翻訳された言葉を見た運転手の顔つきが変わる。
二車線しかなく、反対車線から普通に車が来ている道路を逆走し始めた。
いうなら、ハンドルを握ったマサオくん。
渋滞している列をごぼう抜きする。どうやって元の列に戻るんだと思ったら、
鬼クラ。瞬く間に渋滞を抜けていた。それでもチェックインの時間に間に合うかは五分五分。
そんなことをこのマサオくんは気づいたのだろうか。
おんぼろ車が壊れてしまうんではないかと思うほどのスピードで高速をかっ飛ばす。
あらよ、あらよと空港に到着した。
Thank you very muchと両手を合わせて伝えると
サングラスをきらりと光らせ、グットポーズとともに、にやりと笑う。
8時5分。締め切りまであと少し。
空港で全力で走ってる人を見ると、情けない奴だと笑っていた自分を殴りたい。
私は、空港内を全力で走っていた。
あまりに走るのに、必死になり、バックパックが開いていることに気づかず
中身をバラましてしまう。歯磨き粉の蓋まで、ぶっ飛ぶ勢い。
急げ、急げ。
執念のチェックイン。
これまでの海外遠征で、こんなにギリギリなことはなかった。
ようやく一息ついたタイミングで、
Grabの料金明細が届き、ドライバーの評価欄が開かれた。
Excellent driver I’ve ever taken. ドライバーに初めてチップをあげた。
あいつは、きっといいレーサーになる。