どんなときでも、確認は入念に。

「老後の目標とかある?」

これと言って理由もなく、私が質問すると父は、

「日本の全空港にあるラウンジを制覇する」

と答えた。なかなか悪くない。そしてすぐさま、

「現時点である程度行ったから、日本の百名山を全部登ろうかな」

と続けて答えた。それも悪くない。

そう思った私は、週末に一度山に登ってみることを決意した。

平日を淡々とこなす。

一緒に登山するメンバーを研究室で募ったが、もちろん断られ、一人で登山を決意。

登山当日、初心者登山家に何を準備していいかなど、わからずリュックにタオルを入れ、

普段の服装に帽子を追加し、家を出た。

まずは、山頂で食べる昼ごはんを調達するべく、コンビニへ。

登山では、山頂で食べるご飯が歩を進めるモチベーションになると聞いたことがある。

私は、2Lの水と大盛りのざるそばを購入し、そそくさと車に戻った。

高速を使い、二時間半ほどで目的とする県内最高峰の山に到着。

怪しい天候のなか、自分の他に誰も登山客がいないことを察する。

天気が悪い時は、登山はしない方がいいということを学んだ。

いざ、登り始めるとすぐ息が切れる。思ったよりきつくて早くも帰りたくなる。

そうはいっても、お金を掛けて来た以上、引き戻るわけにはいかない。

どろどろの地面、数多のへび、歩くペースがどんどん加速する。

山頂に近づくにつれ、霧が視界の邪魔をする。

あと、少しで山頂。腹が減ったこともあり、さらに足早になる。

遂に登頂。初登山成功。思ったより気持ちいい。

ようやく、食べれる昼ごはんにココロオドル。

そう思いながら軽くスマホをつついていると、突然、土砂降りの雨が降り始めた。

これは、下山に影響が出るかもしれないと感じ、急いで昼飯を食べる準備をする。

ざるそばにほぐす用の水とつゆをかけ、のりを振りかける。

準備は整った。そう思い、

袋から割り箸を取り出し、取り出し??取り出せん。

土砂降りの山頂で独り俺は、コンビニの店員に激怒した。

どう考えても、入れるだろ。割り箸は。ざるそばに水2L買うやつには、割り箸入れるだろ。

血の登った頭を土砂降りの雨が冷ます。確認しなかった俺が悪い。

初の登山。土砂降りの山頂で、俺はざるそばを手をチョキにして食べた。

どんなときでも、確認は入念に。

これが、初登山での教訓である。

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