「変えた方がいいもの」と「変わらなくていいもの」

「美容師になって今年で14年目ですね。」

そう答えたのは、予約3時間にネットで適当に選んだ美容室の美容師さん。

そこそこベテランなら、もう少し自分の髪に気を遣えよと言わんばかりの荒れ具合。

そんな雑念をのどぼとけほどまで出して、飲み込む。

というのも、私はいつもいく美容室から電話でドタキャンされたからだ。

理由はコロナ。それはしょうがないと返事し、電話を切って今ここに至る。

美容室では、これと言って会話はしたくない派だが、

それは美容師さんに圧倒的権限がある故、口出しできない。黙って雑談をする。

黙って、雑談はできないんですけどね。はい。

自分の出身から、趣味、現在の自分が置かれている状況。

私で言うなら、博士課程に在籍しており、研究をしているといったことを軽く話す。

その後は、基本的に自分のことを話してもしょうがないので、相手の話を聞くようにしている。

美容院と1000円カットの違い、美容師と床屋さんの違いと言った感じで、

美容院業界の気になっていることを畳みかけるように聞く。

聞いてる間に、自分自身がいつも同じことを聞いているから、答えを思い出す。

ある意味で、クイズを出している感覚になる。

会話は弾み、弾んだかどうかは知らないが、

常連さんと新規客の扱い方やお店の回転率といったビジネスの話になる。

とある居酒屋のチェーン店では、

「回転率を上げるために椅子を硬くしたり、エアコンの温度を下げてお客さんを早く返す工夫をしている」

という少し興味深い話に気をつられ、会話は続く。

「常連客と新規客では、長期的視点から考えると常連客を優先した方がいい」

そんな意見を言われ、まぁそれはそうだなと同意したところで、大方のカットが終わった。

後頭部を鏡で見せてもらい、軽くセットしてもらって終わった。

「どうですか。かっこいいっすね!!」

そういう美容師とは裏腹に、

自分のイメージとは程遠い髪型になった荒れの果ての姿を見た私は、全力の作り笑いをし、

店を後にした。

やはり美容室にいくなら、いつものところだな。

14年目の美容師の

「常連客と新規客では、長期的視点から考えると常連客を優先した方がいい」

という言葉を思い出し、時間差で腹が立った一日だった。

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