ラオスの首都から目的地まで、特急列車に乗り、約2時間。
早朝7:30発で、ホテルから駅までは17分。
朝ご飯を食べることを考えると、6:00-6:30に起床し、6:45分にホテルを出れば間に合う。
そう思っていた。
無事、時間通りにホテルを出発し、タクシーを探す。
たが、思ったよりすぐ見つからない。ここがラオスだからか。
ホテルで予約しなかった自分を悔いる。
ここで粘ってタクシーを探すか、そこらを走るトゥクトックと呼ばれる三輪車に乗るか考える。
直感的にトゥクトックを選んだ私は、ドライバーに目的の駅を言う。
目的地は、タイから入国し、チケットを買った駅だ。
距離を理由に断られるが、そんな時間はない。
時間がないから、なんとかしてくれと言うと、
別のドライバーに繋いでくれた、ここでビジネスが生まれたと思い、トゥクトックに乗り込む。
たが、走ってすぐ気づく、この原付ペースでは間に合わない。
なんなら、マップとは異なる方向に向かっている。
本来なら昨日、目的地には着いていたはずだが、自分の詰めの甘さゆえに、
ホテル代を追加で払ってしまった。これ以上のミスは許されない。
ドライバーの肩を叩き、トゥクトゥクを路肩へ寄せる。
目的地の再確認と7:30発の列車に乗る旨を伝える。圧をかけた甲斐があったかはわからないが、
目的地は自分の勘違いのようで、乗車予定の駅にちゃんと向かっていた。
だが、それでも到着予定時刻は7:25。
このオヤジも飛ばしているのはわかるが、車とはまるで馬力が違う。
遅い。なんとか7:24分に到着。間に合った。
入り口に向かうが、日本とは違い、空港みたいな手荷物検査があり、100人以上並んでいた。
この勝負、ここで終わった。
ラオスではミスばかりだ。
あまりミスは気にしない性格だが、ミスってはいけないタイミングでのミスは、訳が違う。
自己嫌悪になり、スーパーバットモードに突入しそうになる。
そのとき、心の声が聴こえてくる。まだ諦めるには早くないか、と。
私は、常軌を逸したがめつさで、100人以上の行列をごぼう抜きし、先頭に割り込んだ。
これで間に合う。
手持ちのQRコードを職員に見せると、チケット売り場に行けと言われた。
なんでだよ。なんでなんだよ。
頭の理解が追い付かない。
猛ダッシュでチケット売り場に向かうも、そこにも大名行列。
待てども待てども、列は、全く進まない。先頭の中国人集団がごたついている。
7:29。私は諦めた。
意外と、諦めると清々しいんだなぁと新たな発見に驚きつつも、代案を考える。
別の列車は夕方発。それまで何もないこの駅でステイするか、
いっそのこと行くのを諦めて、何もない首都に戻るか。また選択を迫られる。
目的地に行っても滞在時間は14時間ほど。
これは、どこにも行かず、ここでボケーっとするのがいいのではないか。
そんな悲壮感漂を感じたのか、
前に並んでいたおっさんが私のチケットを奪い取った。
チケットと時計を見るなり、おじさん3人衆は声高い笑った。
全てを理解したようだ。抜かしていいぞと背中を押す。
列車は乗り過ごしてるし、夕方の列車なら電光掲示板が示している通り、
24席も余ってるから、この優しさは誤差。その優しさが辛かった。
この諦めない男の助太刀で、私は、再度ごぼう抜きし、行列の先頭に立っていた。
チケットを渡すと、職員が黙々とキーワードを叩く。
すると、PCの画面が黄金に光出す。
8:42の列車に空きが出た。
私は、何が起きたか理解できなかったが、奇跡的にその列車と変更することができた。
諦めない漢が、諦めた男を助けた瞬間だった。
物事は、本当に最後の最後までどう転ぶかわからない。
礼を言おうと振り向いたが、そこに諦めない漢の姿はなかった。